The Flame / Steve Lacy  



  脂の乗っていた時代のスティーヴ・レイシーの本作品は、トリオ編成だが、ソロ、デュオもある異色の作品。レイシーの多彩なアドリブが展開する聴き応えのある演奏です。なお、ボビー・フィユー作曲の〈ウェット・スポット〉以外はレイシーのオリジナル。



1曲目〈ザ・マッチ〉、ユニークなテーマで始まり、レイシーはオープニングから全開です。レイシーはキーキー、ガーガーという音などを吹きまくり、ダイナミクスをともなって叫び、唸り、地響きをたてるソプラノ・サックスが凄まじい。バックの疾走感溢れるボビー・フィユーのピアノと、小刻みにリズムを刻むデニス・チャールズのドラムの存在さえ薄らぐようなレイシーの熱い演奏です。

2曲目〈ウェット・スポット〉は、ピアノのボビーとドラムのチャールズとのデュオで、レイシーはお休み。ボビーのピアノは煌びやかな音色で軽やかに流れていき、、ドラムのチャールズは終始シンバルのみのプレイ、ボビーは鍵盤上を自由自在に走り回り、どんどん透明感を増していく。

3曲目〈ガスツ〉は、レイシーのソロです。短いフレーズをひたすら繰り返していくテーマ。パートでも繰り返していくアドリブ、高音のピーピーなど色彩感に満ちた音を発し、ソプラノ・サックスで出し得るあらゆるサウンドと音色のあらゆる奏法とテクニックによって、レイシー独特の鋭い叫びを放つ。

4曲目〈リックス〉もレイシーのソロです。伸びやかで澄み切ったソプラノ・サックスのメロディーが流れます。比較的速いテンポで、かすれ気味の音色に、歯切れのいいソプラノ・サックスが表現豊かなアドリブをエネルギッシュなプレイで展開している。

5曲目タイトル曲〈ザ・フレーム〉、レイシーのストレートにふくよかな音色でテーマが流れる。ボビーは小気味よく流れるようなスリリングなソロを展開し、続くレイシーは唸り声を出しなら登場、主に高音を発し、スピード感に溢れ、自由奔放に、アグレッシブなプレイを繰り広げています。そして、チャールズはテンポよくドラミングが冴えわたり、心地良くスウィングしています。 
   

 Recorded. January 18 and 19, 1982.
 Soul Note. 


 Steve Lacy soprano sax
 Bobby Few 
piano
 Dennis Charles
 drums

 1. The Match 9:49
 2. Wet Spot 4:27
 3. Gusts 7:35
 4. Licks 8:16
 5. The Flame 13:11